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平成16年4月3日
福岡の小劇場系演劇状況の概要
FPAP事務局長 高崎大志

● 序
まず、小劇場系カンパニーで最大の動員を誇るのはギンギラ太陽'sというカンパニーである。
約3000人の動員があるようである。
その他1000人を超える動員がある劇団は1,2といったところである。
動員が300人を超えると、普通の劇団と認知され、500人を超えると上流に位置する劇団と認識されるようである。
動員が500人前後で、定期的に年1回の公演を行っている劇団は5,6前後。
定期的に年1回以上の公演を行っている劇団は20〜30前後。
活動の状況が不明な劇団もあわせると、劇団数は60〜90といったところ。

劇団四季の専用劇場、博多座の開設などの商業演劇的にはおおきな動きがあった。
ギンギラ太陽'sの動員増と時期的には重複しているが、小劇場系演劇にどれほどの影響があったかは不明である。

劇団によって劇作方針は異なるが、芸術性の高い団体は動員に不利な面があり、
公演を有効に成立させる動員が得るのが難しい。
エンターテイメント性の少ない、全く新しい表現が公演として継続して成立する可能性は低い。
全国的にもまったく独自の演劇的手法を劇作の中心に据えている団体はないと思われる。

● 人口、周辺都市
福岡都市圏の人口は約200万人。
(福岡市130万人)JRと地下鉄と私鉄があり、周辺都市から福岡市への移動には大きな支障はない。
約60km離れた、人口100万人の北九州市の演劇者とは組織的な交流はなく、
相互の交流の活性化は双方の舞台芸術振興の課題であろう。
衛星都市である大野城市春日市では行政主導による演劇イベントも増えており、
福岡市内の劇団が大野城春日市で公演を行うこともある。

● 劇場の状況
市内のおもな小劇場は
ぽんプラザホール(108)あじびホール(120)NTT夢天神(250)
甘棠館(60)シアターポケット(40)アクロス福岡(120)
ふくふくプラザ(250)西鉄ホール(400)
などがある。料金や交通の便などで、地元団体ではぽんプラザホールの利用割合が最も高く、
週末の多くは演劇公演で利用されている。

劇場のステップアップとしては
ぽんプラザホール(108)→NTT夢天神(250)→西鉄ホール(400)
が、考えられる。西鉄ホールはホールの主催事業による劇団の招聘公演が多く、ブランド性が高まっており、
地元演劇人がいつかやって見たいホールとしての地位を固めつつある。
またホール専属のプロデューサーがおり、適切なアドバイスが受けられるようである。
しかしながら使用料金や、動員の問題で西鉄ホールでの地元劇団の自主公演を行える劇団はギンギラ太陽's位で、
今後の同ホールの動きにより地元劇団が受ける恩恵は加速度的に増えていくだろう。

● 練習場の状況
練習場としては、全国的にも先進的な「パピオビールーム」がある。
さらに平成16年5月から都心である天神から徒歩10分、
無料駐車場も併設された、練習場(行政の会議室の転用)が開設された。
練習場の状況という点では、他都市と比較しても恵まれた環境にあるだろう。

● 横のつながり
5年ほど前までRTUという演劇団体の横のつながりがあったが、現在劇団の横断的な横つながりは乏しい。
劇団によっては他劇団との交流が盛んな例も見られる。
多くは何かの機会につながった固定化した団体での交流に限られている。
現在横断的な演劇団体や制作者の横のつながりを作っていこうという動きがあり、今後の動きが注目される。

● 批評感想
批評の場は乏しく、個人でフリーペーパーを出したり、サイトを運営していたりしている。
その労力価値は高く評価されるべきであるが、批評における相互研鑽の場がなく、相対的な情報になりえていない。
個々の批評感想がある程度一般化できるのか、その個人だけのものなのか判断する基準が示されていない状況である。
今後、個人の突出した活動に頼らない、いろんな視野からの感想批評が集まった場が必要である。

● 行政の姿勢
行政の姿勢は総合的な都市政策の問題であり、行政に頼る発想は自らの可能性を閉ざすのみである。
筆者個人としては、利用するのはよいが、頼るのは負けだと感じている。 
近年、文化芸術振興財団が福岡市の外郭団体として発足し、精力的な活動を見せている。
ワークショップやセミナーなど、大変有意義な企画も多い。
ここ1,2年特に柔軟な発想を行うようになっており、ホール受付業務のNPO法人への委託、会議室の練習場への転用、
実演者のヒアリング等、限られたリソースを有効に使おうと創意工夫しており、高く評価できる。
表面を取り繕い、見栄えがよく、不満のでにくい事業を行おうという行政のこれまでの姿勢から、
多少見栄えが悪くても、ニーズに沿った有効な事業を行おうとする姿勢は今後も継続してもらいたい。

● 今後の展望
平成16年4月から、公募、コンペ、プレゼンにより業務委託が決まった
NPO法人FPAPが上記のぽんプラザホールの受付委託を行うこととなった。
FPAPは、福岡の舞台芸術振興を目的として作られたNPO法人であり地元の演劇に長く関わり、
実績のあるものが多く名を連ねている。
このような実演者の団体に、人・予算・場が与えられたのは福岡では初めてのことであり、
ホールの受付業務だけをこなすのではなく、舞台芸術の振興に大いに寄与していくことが期待される。
また、地元団体もこの機会を千載一遇のチャンスと捕らえ、相互に協力して、個々の地元劇団の発展と、
福岡の舞台芸術文化の発展に寄与していってもらえればと切望する。

注:ここにあげられた数字は、大きく外してはいないと思うが、筆者個人の感覚によるところが多いことを断っておく。
また、誤情報の指摘には随時修正の用意がある。
また誤情報により関係者に迷惑をかけたときは即時謝罪の準備があることも付け加えておく。
こういう内容をまとめたということを評価してもらって、平にご容赦願いたい。

 
 
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