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平成18年1月19日
FPAP事務局長 高崎大志

 
にしすがも創造舎を見てきました。 〜廃校を稽古場に〜

平成17年9月22日、にしすがも創造舎を見学してきました。
当日は国内最大のアートNPOともいわれるNPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)事務局長の蓮池さんにお話を聞かせていただきました。視察の申込もこれまで、20件以上になっているそうで、他の人たちと同じ事ばかり聞いたかも知れませんが、お忙しい中、ご対応下さりありがとうございます。

にしすがも創造舎はANJとNPO法人芸術家と子どもたちが管理しています。地下1階、地上3階建ての建物です。施設の概要や詳細については、にしすがも創造舎サイト(http://sozosha.anj.or.jp/)をご覧下さい。
サイトに書かれている情報は省略しているので、このレポート読む上でも、先にサイトをご覧になってから、読んでいただくことをおすすめします。特にお忙しい方は「施設概要>フロアマップ」だけでもご覧いただくといいのではないかと思います。

このレポートは聞き取りを中心にしていますが、文責は高崎にあることを申し添えます。


●供用開始前

学校を稽古場にしようとしたきっかけ

ANJの理事長である市村さんから、「廃校を稽古場として利用することはできないだろうか、ちょっと調べてみて・・・」といわれたのがきっかけ。東京の稽古場の環境は十分に整備されて無かった。各カンパニーも、劇作や公演制作や団体運営を行うことが活動の中心になるので、稽古場環境を変えるまでの余力はないと思われた。「ちょっとやってみようかな」という思いではじめた。
と、いっても最初から具体的に動いたわけではなかった。ANJのメインの事業の相談で日本財団に行ったところ「廃校を稽古場に」の話にもなり、このプロジェクトに資金を出せるかもしれない。という話になった。その際、このプロジェクトに期限が設定され、そこからANJの事務局長である蓮池さんが中心となって本格的に進行しはじめた。

最初の段階としては、あちこちの区役所に飛び込み的に話を持っていった。当時は今と違って「廃校を有効に活用しよう」と言う風潮は全くといっていいほど無かったこともあって、区によって温度差がありけんもほろろに対応されたこともある。区の教育委員会をまわる中で、比較的好感触だったところに、企画書を持っていって話を詰めていった。(学校に直接持っていったわけではない。)

最初に港区が、興味を示してくれた。区内の小学校の教室をダンスの稽古場として利用した。港区での事業を実績として、次は豊島区とこのプロジェクトの話をすすめていった。「学校開放係」の担当者が熱心に話を聞いてくれ、まず、千川でこのプロジェクトをやった。千川の小学校は、地域住民がすでにスポーツなどで利用していて、利用者協議会に参加するという形で地域住民との協議を進めていった。

にしすがも創造舎(=旧朝日中学校)の場合、豊島区には予算はなかったが、担当の文化デザイン課は積極的に動いてくれた(助成金や地域住民との協議など)。地域住民との事前協議はすべて行政の方でやってくれた。ある程度地域住民に話が通ってから、ANJも参加しての説明会を開催という流れになった。

「あんたたちも予算もないのに、たいへんだね」というような部分で、地域住民の方も理解してくれたようだ。行政が共通の敵(?)みたいな感じで相互理解できた部分がある。また行政がそのような立場を買って出た面もあるかもしれない。


「オープンまでの経緯」もあわせてご参照下さい。
http://sozosha.anj.or.jp/archives/open.html


●供用開始後


・供用開始時の問題等
供用開始してみて、空調がついていないなどの問題はあった。台風の時などは施設の補修などで大変だった。落ち葉もひどくて職員が掃除した。教室は防音(声)の問題もあるので、一つとばしで使うようにしている。

・利用している団体からの感想・要望等
稽古場の評判は良い。やはりいままで稽古場の環境があまりにも不十分すぎた。長期間占有できるメリットは大きいだろう。OFF・OFFシアターやアゴラ劇場ならば間口がとれるくらいの広さはあるが、もうちょっと広いとよかったかもしれない。(OFF・OFFやアゴラは東京の劇場名)

・財政状況について
区からの予算はほぼ、ない。
稽古場維持経費として、光熱水費+管理人件費で月100万円かかる。稽古場(一教室)の利用は月6万円なので、それだけでは到底採算がとれない。体育館を稽古場として貸すことがあって、そこは1日12万円となっている。蜷川さんなどが使ってくれる。とくに蜷川さんはここを気に入ってくれていているようだ。体育館の稼働状況をあげようと、1500万かけて空調を整備した。予算はANJからの持ち出しになっている。


・何人で管理しているのか
校舎内にANJの事務所がある。6,7人のスタッフがいるが管理専任の職員がいるわけではなく直接の人件費が高騰しているというわけではない。

・利用団体の審査について
応募倍率約3倍となっている。ANJが設置する審査会で選考し、決定している。基本的には申請書類の審査となる。審査会のメンバーでもそう大きくずれることはない。条件の中に「地域住民やアーティスト同士の交流に積極的であること」という項目を入れているが、利用団体が自ら企画するのではなく、稽古場の公開や交流会など、あくまでANJが企画運営して団体はそれに協力してもらうという形。

・この事業を始めることができたポイント。
区が予算を出せない中で、ある程度(施設運営の)金銭リスクを吸収できる財政基盤のあるNPOだったからできたのではないか。ANJの年間予算は多いときで2億くらいいった年がある(文化庁からの助成金が1.2億あった年。主事業は「東京国際芸術祭」)。施設の改修などの費用もあるので、一定規模の財政基盤がないと出来ないだろう。
また、理事長の市村や自分の性格も大きかったと思う。先駆的な事業であり、二人とも石橋を叩いて渡るような性格であれば、実現してないだろう。

・現在抱えている課題
今後の運用として、ただ場所を貸すと言うだけではなくて、創造から発信、また育成の観点からも運営を行っていきたい。今後は、体育館で公演を行っていきたい。体育館を仮設劇場のようにしたいと思っているので、現在消防署や保健所などに相談している。現状では機材はないので、持込が必要。また行政の担当者個人の熱意による部分は確かに大きいが、続けていくならば、担当者が変わっても継続していける論理構築は必要。



付記

ANJ主催の東京国際芸術祭 http://tif.anj.or.jp/
2月10日より東京国際芸術祭がにしすがも創造舎をメイン会場に開催されます。
リージョナルシアターも東京国際芸術祭の関連企画になっています。

1月27日に開催の福岡市文化芸術振興財団主催のアートマネジメントセミナーでは
ANJから相馬千秋さんがパネリストとして参加されます。

 
 
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