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小劇場演劇におけるロングラン公演について劇場・表現者・制作者それぞれの立場から語っていただきます。ロングラン公演をおこなうことで得られるもの、ハードルとなること、うまくいくための方法などについて、熱く語り合います。ロングラン公演企画の裏側に興味のある方、ロングラン公演を検討している方にオススメです。

リニューアルしたカフェアートリエのお茶を楽しみながら、ごらんください。

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日時:2008年3月20日(木・祝)16:00〜18:00   場所:カフェアートリエ

パネリスト:
荻野達也:(fringeプロデューサー)
笠原希:(in-dependent theatre 劇場制作)
中屋敷法仁:(劇団「柿喰う客」代表・脚本・演出)
萩原あや:(劇団Hole Brothers 制作・役者)
司会:
高崎 大志(FPAP事務局長)


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※写真をクリックすると、別ウィンドウで大きく表示されます

リバレインビル地下2階にあるカフェ・アートリエにて
開放感のある雰囲気の中セミナーははじまりました。

まずは、冒頭でロングラン公演の意義について、意見が交わされました。

週末の公演だけでは、みたくても見られない人が出てくる。そういう人にもみていただくことができる。というロングランの基本的な意義が再確認されました。
また、ロングラン公演にふさわしい「すばらしい芝居」にするために、準備期間を長くとったり、いろいろな創意工夫をおこなうようになる。という点も確認されました。

他にも、演出家のパネリストからは、自分の作品には自信があるので、ロングラン公演をして多くの方に観ていただきたい。という熱い意見もありました。

長い期間公演を行うことによる作品や表現者への影響として
・役者やスタッフの練度が高くなっていく
・劇場に入ってからわいたイメージを実行に移すことができる。
・実際にお客様の反応をみてから、さらに試行することができる。
・長い期間劇場にいることで、劇場の雰囲気になじむことができる。
というプラスの点と

・次々にイメージがわくことで妥協できなくなっていく。
・ずっと同じものを演じ続けることで役者が疲弊してしまう。
・長い期間劇場に通うことで、公演することがルーティンワークになってしまう。
というマイナスの面があるようです。

どちらも「劇場に長い期間滞在すること」により起こる影響で、
・作品をおもしろくするための演出をつきつめていくこと
・決まった期間、公演を成立させ続けること
の両方のバランスをとっていく必要性が確認されました。

今ある作品をつきつめていきつつ、常に新鮮な気持ちを持ち続けることが、ロングラン公演を続ける秘訣なのかな、と感じました。

つぎに、劇団として、ロングラン公演を経ることでどのような変化があったかというテーマには

・ロングラン公演をとおして、いっしょにやっていくんだ!という気持ちが高まり、いい結束力が生まれた
・動員を伸びた。
・作品の方向性がはっきり見えた。
・公演に関して劇団内部で話す時間が増えることがよかった。
という報告がある一方、劇団自体が解散してしまったというケースやロングラン公演で動員が増えたにも関わらず、次に活かせていないケースも紹介されました。

これらのケースには、ロングラン公演をすることが終着点になっていて、劇団としてなぜロングラン公演をしたいのか、ロングラン公演のあとそこで得たことで今後何をやっていきたいのか?この点を意識する必要があったのでは?という意見がありました。

ロングラン公演は、劇団にとっても負担が大きいだけに、ロングラン公演をやることが「目的」になってしまわないよう、内部で十分なコミュニケーションが必要なようです。

その他、劇団の手売りはロングラン公演だと売りにくかった。公演日が多いため、いつか行けるだろうと思われてしまったのかもしれないという意見がありました。
これに対して、作戦はいくらでもあるのではないか、たとえば、あえて土曜1公演にして、チケットが売れれば追加公演にするという作戦もあるなど、さまざまな対応策の意見も出ました。
ここはロングラン公演ならではの作戦がたくさんありそうです。

参加者からは、以下のような質問がありました。

1)「ロングラン公演では、上演する作品もロングランということを考慮したうえで選んだほうがよいのか?たとえば日頃あまり芝居を観ない人にも声をかけやすい作品にしたほうがいいのか?」

→基本的にはロングラン公演だからといって作品を縛る必要はないが、挑戦的にするロングランの場合は作品の内容も考えないといけないと思う。
という回答がありました。

2)劇団では、全員仕事をしていて、会社員だ。ロングラン公演となると両立の問題がある。そこをなんとか凌いだという話があったが、具体的にどういう対策があったのか?

→早い段階で有休をとるようにしたりした。公演日程が早い段階で決まることの多いロングラン公演なら、根回しもやりやすい。他にもWキャスト案や、ハーフタイムのキャストもありだと思う。開演時間を遅らせたり、後ろの方に出番のある役にしたり、やり方は色々あるだろう。
ロングランには出られないという役者もいた。会社の協力がないとできなかった面もある。企業によっても文化的な活動を支援しているということある。ぜひ役者さんに努力してほしい。根回しする時間が必要だから、早く劇場を押さえるべき。
という回答がありました。

他にも参加者からの意見で観客の立場から「ロングランは観客にとってもプラス。口コミで話すことができる。公演終了後に感想を聞いて、見たかった〜と後悔することもよくある。ロングラン公演だと口コミが生かされると思う」というご意見もありました。

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○最後にパネリストからのコメントを借りながらまとめますと、
無理をしてでもロングラン公演をやるべきだ、ということではありせん。いきなりやろうとしてもロングラン公演は無理もあるだろうし、少しでも日程をのばしてみるというのも前進だと思います。

まずは日曜日を楽日にしないことからはじめてほしい。日曜日で公演が終わると口コミの効果が得られにくい。そこを1日伸ばすだけでも違うと思います。

映画などと違って席数や日程にも限界がある演劇は前売りが必要な表現です。今日、ここでしか見ることができないんだよ。ということを積極的にPRする必要があり、そのためには前売りをしっかり売っていくことだと思います。

また、ロングラン公演を通して、どうしたいか、少しずつでもどうしたらいいか、など目標を持って考えていけたらいいのではないでしょうか。福岡でそういうことができる団体がふえると地域も変わる気がします。

このセミナーではロングラン公演という方法を通して、劇団運営・制作戦略などを考えるいい機会になりました。ロングラン公演をやってみたいと漠然と思っていた劇団の方はもちろん、「ロングランなんてムリムリ!」と思っている劇団の方にも参考になる話ができたとおもいます。

 

パネリストのみなさま、ご参加いただいたみなさま、ご協力いただきましたサポートスタッフの方、アートリエのスタッフのみなさま、関係各位に感謝いたします。

(今回はネット配信という新しい試みでお聞きいただいた方もいらっしゃいました。少しずつ改善しながら、また遠方の方にもご参加いただけるようにしていきたいと思います。)

 レポート:三坂・山本(NPO法人FPAP)

 

 

主催:財団法人 福岡市文化芸術振興財団
企画協力:NPO法人FPAP(エフパップ)