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日時
2011年8月23日(火) 19:00〜22:00
会場
ぽんプラザホール
講師
古賀裕治(九州大谷短期大学 講師)

ステージスタッフワークショップ【舞台監督編】全1回

 

照明編・音響編と違い、舞台監督編はレクチャー中心のワークショップでした。

まずは、「舞台監督やったことある人?」と講師から参加者へ。
初心者を対象としたワークショップということで、受講者の大半が舞台監督の未経験者。
舞台監督をやったことがあるのは3名ほどでした。

自分でやってみてどんな仕事だと思ったか?という問いに、
「現場をまとめてスムーズに事故がなく進める仕事」、「キャストとスタッフのかけはしかなと思っている」「主にスタッフを中心とした管理、運営、調整役だとおもっている。」などの返答が。

古賀さん:そうですね。今出た答えも一つの答えです。僕が今日言う事は、今まで僕が諸先輩方に言われてきたこと。舞台監督の仕事は、視覚的に見えない、聴覚に訴えるものでもない。稽古スケジュールを作ることから始まり、演出家がどんな作品をつくろうとしているかを考えている。出演者よりも人望が必要だし、時間を各パートに割り当てるという仕事もあります。

古賀さんは、舞台監督の師匠から言われた「舞台監督は批評の対象にならない」という言葉を大切にしているそうです。
舞台美術や照明・音響などの作業は、演出や戯曲・役者と同じように、作品の要素として批評の対象になりえます。しかし、舞台監督の仕事はコミュニケーション作業なので、スタッフや出演者が円滑に自分の仕事が出来るよう、信頼関係をつくる仕事です。
また、作品を作る中の関係だけではなく、表現者と劇場との信頼関係もつくっていくのが仕事です。各方面から情報を収集していくため、古賀さんは「舞台監督は聞く仕事である」とおっしゃっていました。「舞台監督の目的は舞台の初日をあけることですが、そのために演出家や役者・スタッフが何をしたいのか、話を聞く作業」ということです。「演出家・表現者が何をしたいかを突き詰めていく作業」とも言えます。また、舞台監督がリードしていくということはあっても、演出・スタッフそれぞれの領域を超えていけないというお話もありました。全てのセクションの情報が舞台監督にくるようなポジションになってるが、舞台監督が偉いということではない。連絡する・確認をとる、ということが舞台監督の大きな仕事です。そのためにも、「時間を守る」「遅刻をしない」ことがとても大事だというお話がありました。

古賀さん:人の一歩先を考える。時間より早くくれば信頼されます。技術も何もなければ、時間を守る、ということをまず心がけましょう。それができれば信用されます。スタッフの一員として人よりも早く来る・時間に遅れないというのが大事です。基本ですが、これがなかなか難しかったりするんですね。
また、役者はデリケートなので、彼らの状況を崩さないことが結構大事。役者それぞれにジンクスを持ち、特に小道具の処理についてはジンクスを持っていることが多いので、勝手に触らないほうがいいです。
うまくいったときのジンクスで自分のリズムを作る役者が多いので、それぞれの現場でそれを守っていくのがいいでしょう。

また、「安全のための確認」について、「監督」と名前がついている限り、何か事故があったときには、責任を持たなくてはいけない仕事である、というお話もありました。

 

次に、舞台監督はどんな仕事をするのか?という具体的な仕事の内容について。

一番最初にやることは、台本や曲を聴いてどう思うかを考えることだそうです。まずは自分の感性でひとまず感じてみること。その後、演出家がどう考えるかを聞いていって、自分の感じたものとの差を埋めて、演出家のやりたいことを把握していきます。

・打ち合わせやスケジュールの組み立て
スケジュールの確認(いつから稽古、仕込、本番、など)。
どんなにわかっているつもりでも思い込みなどあるので、きっちり確認しておくことが大事。
予算を聞く、というのも大事。舞台監督によっては、予算全体を把握することも。その場合は、予算を各セクションにどう割り振るかを考えていく作業があります。
演出家の意図をくみ、実現できるようにスケジュールに反映していきます。演出意図がくみとりづらい演出家がいたりするが、粘り強く聞いていきます。
稽古場スケジュールについては、演出助手との相談も含めて組み立てていきます。

・稽古
稽古での変化(役者の立ち位置、出入り、小道具の種類、数など)をどんどん覚えるのも舞台監督の仕事。変わっていくこと、変化をどんどん覚えていく。
演出助手とは別にまたチェックしていくこと。また、変わったことにすぐに対応する、ということも必要です。
演出家の要求に答え、変化することを見つけて、覚えていく仕事です。
「演劇の場合、1〜2ヶ月くらい稽古があっているところが多いですね。できるだけ早いうちから立ち会ったほうがいい」と古賀さん。

・劇場に入ってからの仕事
劇場は一つしかなく、場所も限られているので、全員が一斉に動くことはできません。。
それぞれのセクションについて、どのタイミングでどのスタッフが作業をするか、事前にスケジュールをたてて、割り振りをしておきます。そのためにも、仕込図(大道具、照明、音響)は舞台監督は見れるようになっておいたほうがいいとのこと。
照明、音響、大道具チームそれぞれと、劇場に入ってしまう前に確認しておくほうがよいそうです。

また、道具や工具については、余るくらいの量(総量の10%位)を用意しておいたほうがいいそうです。
作業がたくさんあるので、仕込み作業をしっかりできる人が1人いたうえで、人手もできるだけ多く準備できたほうがいい、とのこと。
劇場に入ってから、舞台監督はたくさんの場面で決定をくだしていきます。。

古賀さん:指示を与える仕事。だから、作品の中身がわかってないといけない、だから、稽古場にいって中身を確認しておく必要がある。劇場入りして、その日に本番をしなくてはいけないときには、1日でやる方法がある。そういう方法を考えるためにも、中身をわかってないといけない。

日本の舞台はだいたい尺貫法でやるところが多いので、尺貫法は覚えておいたほうがいい。というお話もありました。
図面と実際の現場で違うこともあるので、事前に劇場の情報について詳しく調べ、ておいたほうがよいそうです。搬入口についても大きさを把握しておかないと、劇場に行ってから「中に道具が入らない!」となってしまう可能性も。
稽古場も大切だが、舞台監督は仕込みのために劇場の情報や状況を知っておくことも必要、とのこと。


最後に、台本整理のやり方を学びました。

台本から、舞台美術・小道具についてどういうものがいるか、どんな照明になるか、役者がどこから出入りするか、などの情報を把握しやすくするために、マーカーペンで色分けしたり、記号をつけるなどして整理していく作業です。
色分けしたり記号をつけたら、今度は一つの表にまとめていきます。これによって、各スタッフ面で、どんな動きがあるか、というのが一目でわかります。

ワークショップの最後には、古賀さんからあらためて舞台監督として気をつけることなどのお話がありました。

古賀さん:劇場の人たちは入ってきたときから、帰るときまでを見ています。たとえ壊したりしなくても、挨拶の仕方や仕込の仕方、劇場の使い方など、普通の状態も見ています。劇場との信頼関係、コミュニケーションにもつながっていきます。 また、作業中は危険なことが多いので、舞台スタッフは声を大きく出したほうがいいです。物が落ちてきたりしたときに、相手に危険を知らせる必要があります。自分は言ったつもりでも、相手に伝わってなかったら危ない。声は大きく出しておいたほうがいいでしょう。 そして、先ほどの劇場の話に関係しますが、物を壊したときは、すぐに劇場の人にきちんと言うことです。その時逃げても絶対後で分かるので、恥ずかしくてもちゃんと言ってくださいね。

他にも、「どこのセクションも大変だが、舞台監督は聞くのが仕事なので、相手のやりたいことについての方法を提示できるように考えるのが大事。」や「稽古は本番のための稽古だということを忘れないでほしい。本番のための稽古をどう考えるかは、舞台監督の手腕が問われる」などのお話がありました。

 

聞いたことを実践していくのは大変ですが、今回のお話をきちんと実践できれば、舞台監督として、作品作りによりよく関わっていけそうです。




































主催・協力等

主催:NPO法人FPAP
協力:九州地域演劇協議会
後援:(財)福岡市文化芸術振興財団、福岡市
助成:(財)福岡市文化芸術振興財団


その他

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