九州演劇人サミットin大分 2010/10/10 別府市コミュニティ-センター
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レポート第一部|第二部

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第一部レポート

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 




 

 

 

 

 

 


第一部テーマ…
地域に必要な劇場とは
地域発信の事業の意義
地方で活動するに当たって必要な企画・制作力 などについて

 

高崎:こんにちは。第1部のコーディネータのFPAPの高崎です。
第1部では、地域に必要な劇場とは、地域発信の事業の意義、地方で活動するにあたって必要な企画制作力ということをテーマに、パネリストで意見を交わしていきたいと思います。それでは、さっそく自己紹介から。

市原:北九州から来ました、市原です。のこされ劇場という劇団を主宰して演出を担当しています。また、商店街の空き店舗を改装して作った、枝光本町商店街アイアンシアターというところで、地域の商店街のみんなといっしょにお金と知恵を出し合って、劇場をつくり、お芝居をつくり、地域を盛り上げようと活動しています。

中原:福岡市のすぐ南にある大野城市の公共ホール、大野城まどかぴあの中原です。大野城まどかぴあは、大ホールと小ホールがある複合施設で、音楽・演劇・美術の3ジャンルで自主事業を実施しています。そこで地元劇団の支援などの企画を担当しています。

永山:宮崎の都城市からきました、劇団こふく劇場の永山です。宮崎県立芸術劇場の演劇ディレクターとして年間のプログラムを決めたり、ワークショップなどをしたりという仕事をしています。

清末:大分の清末です。大分県民演劇製作協議会の代表で演出と役者をしています。おおいた演劇の会の会長もしています。おおいた演劇の会は、大分の劇団の人たちがが集まり、大分の演劇を盛り上げようということ、横のつながりを作って切磋琢磨し、大分の演劇の質の向上をめざしていこうということで発足した会です。大分県芸術文化振興会議で演劇の理事もしています。よろしくお願いします。

北村:北九州市からきました、kiaya505といって演劇の企画制作運営などをしている北村と申します。全然関係ないんですけど、僕は温泉が大好きで、今日も明礬温泉に入ってきました。別府LOVEです。よろしくお願いします。

〜会場、笑い〜

高崎:それでは、地域に必要な劇場とは、というところから話に入っていきたいと思います。まず、大分の事例から話を始めていきたいと思います。近々大分に劇場ができるという話があり、当初は小ホールも計画に入っていたが、小ホールの計画がいつの間にか計画から削られていた。そこで行政が市民意見を求めたところ、小ホールが必要だという意見が多く寄せられ、結果として小ホールが復活した、という興味深い事例があります。その劇場、どういう劇場ができるのか、清末さんにお話しを聞かせてもらいたいと思います。

清末:大分駅南口にできる複合文化交流施設です。1200席の大ホール。200席〜350席の小ホール。あと、図書館や保育園やケーブルテレビなども入った複合施設です。

高崎:地域に必要な劇場はどういう劇場かという話をした時に、劇場の設備、ハード面でどうなのかということと、ただ貸し館をするのかそれともいろいろと企画を実施していくのかというソフト面でどうなのかということがある。ソフト面ではどういう劇場を望まれますか?

清末:地元の劇団が創ったものを、劇場が主催して場を設定してくれることが理想。場を提供してくれる劇場を作ってくれればな、と思います。

市原:大分の劇場は望んでできた劇場ということですが、大分の演劇人はその劇場の先にに何を望んでいたんですか?

清末:設備の整ったところで公演したい、という希望がありました。その設備をどう使っていくかということだと思うのですが、使う時に、劇場が企画を立ててもらって、そこで芝居ができるように、地元の演劇人を引っ張ってほしいです。整ったオペレーションで芝居をする機会を増やしてほしいと思います。そのために、特に劇場の中に専門の人が入ってほしい。

高崎:清末さんのお話では、これまで大分の演劇人は自分たちで芝居を公演してお客さんにみてもらうということはやってきた。そんな現状で、今大分に求められているのは、劇場が劇場機構を利用したような企画を立て、大分の演劇人を引っ張ってくれるような劇場だということですね。

清末:そうですね、その劇場の中に大分の演劇の状況を理解してくださる方が入ってくれるということを切望しています。

永山:私がディレクターをしているのは宮崎県立の劇場。私の前は、県で演劇好きな人がいてその人がプログラムを決めていたました。そういう人もいなくなって、意見をもらおう、と言ってアドバイザーでオファーをもらいました。その時、アドバイザーだったらやらない、と言ったんですね。名前をだして、誰がプログラムに責任を持っているかをはっきりさせる役職じゃないとできないと言った。そしてディレクターという形で関わることになりました。それには、それまで私がずっとWSの講師をしていたり行政と関係があったという、プロローグがあった。いきなり、行政と関わりを持つことは難しい。求められた時にどう答えるか、ということを積み重ねて、時間をかけて行政との関係性を築いていくことは重要だと思います。

清末:納得。私たちがどう劇場と関わっていくか。何かあった時にすぐ答えが出せるように、私たちが力を持っていかなければならない。

高崎:大分にはその力はあると思う。おおいた演劇の会という横のつながりがあり、パブリックコメントで意見を求められた時もしっかりレスポンスする力がある。他地域からはうらやましく見えるところでもあります。劇場が引っ張ってくれる、企画を立ててくれるということはどういう目的のためにそれを望んでいるのですか?

清末:とにかく地元の団体の質の向上です。いいお芝居を作りたいという気持ちはあっても、厳しいものがある。会館の催しものとして、提携して一緒にやれる、ということができればいいと思う。

高崎:大分の演劇レベルを向上させてくれるような企画を行う劇場が求められているということですね。

市原:たとえば、北九州では、芸術劇場ができて、地元劇団は期待も大きかったが、劇場主導でプロデュース公演をしたことに地元劇団が対応しきれなかった時期がありました。そこで行われるプロデュース公演にスポイルされてしまって、地元劇団がプロデュース公演に取られてしまって地元劇団の公演ができなくなってしまった。
もちろん劇場がプロデュース公演をしてくれたことで、どうプロのスタッフと対話をして作品を構築していくかなど、学ぶところも多かったのは事実です。
劇場主導のプロデュース公演の功罪のバランス感覚を地元の演劇人は持てなかった。その地域の演劇人の受け止め方が重要だと思います。

北村:北九州芸術劇場も若手劇団に劇場を優先的に条件よく使ってもらおうという期間が3年くらいあった。そのあと、その劇団が劇場を使うかといったら、あまり使っていない。逆に、劇場を使わなくても他の方法があるから、その方法を探そうというふうになったんですね。

市原:そうですね。公共ホールのオペレーションを経験する中で、僕自身はこの経験を使ってこの地域で何をするかということに立ち戻った。その時に芸術劇場と連携して地元の方と関わっていくようなこに取り組んでいます。

高崎:中原さんは公共劇場の大野城まどかぴあで若手劇団の育成事業などを行っていますが、その具体的な例などお聞かせ下さい。

中原:まどかぴあはオープンして15年目。オープン当時、福岡都市圏で劇場もまだ少なく、劇団公演の場所が不足気味だったので、KIN-DO芝居という企画を実施していました。公演とドラマドクター等による批評、優れた俳優、脚本などへの顕彰という3つをセットにしたものでした。KIN-DO芝居は最終的にはプロデュース公演を行っていました。クオリティの高い芝居を創るということを重点的に考えた時にプロデュース公演という選択になりました。
ある程度プロデュース公演も行い、横のつながりが生まれたあと、今行っているのは、既存の脚本に取り組む、地元の若手劇団の育成に特化した企画です。大野城まどかぴあの立地的な面からみた特性は、じっくり創る場、劇団にとってもトライアルの場の提供ができるというところだと思うので、劇団が自分たちでは取り組めないことや取り組まないことに取り組んでもらう機会として提案しました。たとえば、戯曲をこちらから提案したりということです。劇団がどの部分を補強すべきなのか、ということに取り組まざるを得ない脚本を私なりに考えて提案しました。

高崎:いま中原さんの話であったように育成的なことを取り組むとしても、ここまで考えて取り組むことが必要だなぁと思ったのですが、永山さんどうですか?

永山:育成事業をしても育たない。でもやらないわけにはいかない。育成事業が始まったからと言ってゴールじゃないと思っています。宮崎の功罪の罪の話をすると、宮崎演劇祭があって、演劇祭の時期に集中してしまい、自主公演が少なくなってしまったということがあります。いずれにしてもまずは、劇団としていい作品を創ると言うことだと思います。
最初のほうで、県立劇場の企画でWSをやっていた、と言っていたのは、戯曲受賞歴があったから。それがあったから劇場側も声がかけやすかったと思います。劇団は劇団で実績を積んでいかないと。それは劇場ができて育成事業が始まったからといってそのこバランスはきちっと取っていかないと。だんだんと育成事業が楽になってしまって、劇団としての表現がなくなってしまう。

高崎:育成事業をしても育たない、ということは違うニュアンスを持っています。
FPAPでも育成事業をしていて、伸びてきている劇団があります。もちろんそれだけではなく、その劇団の努力や才能、運などもあったと思うが、育成事業があることで可能性は上がると思う。劇場の行う育成事業には可能性があると思っています。

市原:劇場の事業の功罪の罪って、演劇人側に実は責任がある。それは絶対に言っておきたいと思う。事業にどう対応するかということは、個人のモチベーションとプラン、劇団のミッションにとってどう機能させるかということ。もう一度それを確認しておかないと、もったいないことになると思う。

北村:話戻っちゃうかもしれないんですけど、育成事業の成果の評価、ジャッジはどういうふうにされていますか?

中原:昨年の公演の場合は途中過程の変化の成果、特に演出家の働きかけがどう変わったかという点と、最終的な公演クオリティ、観客にどう受け入れられたかという点の2点での評価をしました。

永山:先程の育成事業をしても育たないに言葉を補うと、短期的には育たないということになります。長期的に見てどうかという判断は長期間かかる。
最終的には優れた表現者が出るか、ということ。宮崎の県の中だけで評価されるのでなく、県外で評価される人材が出てくることだと思っています。

高崎:地域の課題によって必要とされる劇場の機能が違うという面があります。市原さんの地域に必要な劇場とは?

市原:北九州は大きな工業地帯だったが、産業構造の変化があり、一度大きく沈んでしまった。若い労働者が町をどんどん出て、少子高齢化が問題になっています。そんな中に僕らの運営する劇場があります。町が望んでいることは明らかで、はがれおちていくコミュニティのつなぎとめや、若い人たちを呼び込むこと。そこに演劇の力を使って何ができるか、それがそのまま劇場のミッションになっています。

高崎:地域の中でどんな劇場が求められているか、やはり地域の課題によって変わってくる、ということをここで確認できたと思います。
ここで先ほど永山さんからお話しの出た、県外で評価されるためにどのようなことをしていけばいいのか、地域発信の事業の意義ということですが、永山さんはこれまで具体的にやって来られた活動の中で感じられたことなど、なにかありますか?

永山:劇団こふく劇場は都城というところで活動している唯一の劇団です。地域の人たちとどう接点をもっていくか。具体的にやっているのはこどもたちとのワークショップ、障がい者との作劇だったりということです。価値観の違う人とのコミュニケーションが減っている現状があります。地域のコミュニケーション不全に働きかけていくことだと思いました。都城の活動の中で見つけたこと、地域で活動している私たちは常に演劇とは何か、を考えざるを得ない。それはいいことだと思います。

高崎:北村さんは制作者として劇団のツアーを公演の運営等された経験があります。他地域で活動していく意義は?

北村:シンプルに言うと多様なお客さんに観てもらうこと。初めてのお客さんに観てもらうことでもう一度実演家が、作品づくりについて見直す機会になること。笑いのポイントや泣きのポイントが公演時に違うことが如実にあります。

高崎:今、劇場法という法律が検討されていて、地域発信での創造事業の意味づけが変わってくると思うのですが、今大分から他地域に発信していくような劇団はあるんですか?

清末:今は、正直ない。演劇をやっている人たちの中でそうなりたいと思っている人はいる。だからこそ、横のつながりで力をつけようと頑張っている状況があります。

高崎:地域発信ということには、2つのポイントがあると思う。他地域に公演のできるクオリティを備えた作品を他地域で上演する。その地域の活動情報が他地域で知ることができ、その地域の盛り上がっているということが県外に知れ渡っているということ。そこで、地元の表現者が頑張るためにも、他地域からの評価が重要と思うが、どうでしょうか?市原さんも劇場の他地域からの評価って考えますよね?

市原:そうですね。相対的に見て、自分たちの発信しているものがどういう特色があるのか、ということを劇場カラーとして発信していく。それが他地域から見て一つのモデルとみられることがあるといいかな、と思います。

永山:地域発信ということを今振り返って思うと、個別の経験が聞きたいんですよね。私が人と違うどういうことをしたのか、といいことが知りたい。履き違えてはいけないのは、今これがはやっているから、こういうものが外で評価されるから、ということからスタートしてはいけない。
自分たちの今いる場所、こういう経験をしたということを作品に昇華させていくこと、それが外からの評価につながると思います。

高崎:地方で活動するに当たってどういう企画力をつけていけばいいのか、というテーマに入りたいと思いますが、その前に劇場法の流れを少し説明したいと思います。
国の文化予算の使い道の多くを中央で決めている現状があります。中央にいる方は地域の現状がみえにくい、結果として文化予算のほとんどが東京で使われたり、地域で有効活用出来ていないという、うまくいっていない状況があります。
そこで、各地域に優れた劇場(創る劇場)を50劇場くらいつくり、そこで優れた芝居をつくり、そこにお金を出すようにしよう、という趣旨の法律が検討されています。
それ以外に、創る劇場で創った芝居を見てもらう劇場もつくろうということもあります。
私はこの法律はいい法律で推進してほしいと思っています。
その理由として、地域で役者として喰っていくことが難しい。劇場法ができて、地域で優れた劇場が作品を創作していけば、地域で活動している一部の優れた俳優は地域にいながら役者として生活できるようになる。また、今稼働していない劇場が多くある中で、観る劇場としても可能性が出てくると思います。
それを念頭に置きながらテーマに戻りたいと思います。

北村:劇団は何をやって、どういうところに着地したいのか突き詰めて考えているような団体は少ない。劇団が1つステップを上げるためには、なんで演劇活動をして、どういう風になりたいのかを劇団員が共通認識しておくことが必要だと思う。どういうフィールドで活動しているのか、どんなポジションでどうなりたい、という棲み分けを認識することが必要。クオリティをあげて、その後どうなりたいのかの着地点を覚悟として持っておく必要があると思う。

中原:今、まどかぴあが行っているのは若手を対象とした事業です。自分たちの劇団がどうなりたいか、を制作、主催、劇団員が共通認識することが重要だと思います。

高崎:結構その話し合いがきっかけでけんかしません?昔、そういうことが必要だと先輩に言われてそうんな話し合いをやったんですけど、みんなやりたいことがばらばらで、結局その話し合いはなかったことになりました。

〜会場、笑い〜

市原:作品性は置いておいて、劇団でどういうミッションに向かっていくか、共有する方法はあると思っている。僕のところで言うと、地域でやっているということはメリットと思ってほしい。デメリットと感じてしまうのは地域を把握しきれてないということだと思います。コミュニティに入って、観察してコミュニケーションしていったときに、これだ、という宝が見つかるはずなんです。劇団員と一緒に、この地域に何が必要で何に困っているのか、そこに自分たちは必要なのかということを考えていくと、ミッションを共通認識として向かっていける。
正直地域で活動することは、デメリットと思っていた時期もありました。
芸術劇場で、いろんなアーティストと出会って飲んだりして、なんで東京にこないの〜?とか、早く東京公演ができるといいね〜、とか言われて。東京って何なんだろう?って。

高崎:殴れ!(笑)そういうこという東京の人は、東京が日本だと思っているんですよ。僕は、東京ではなくて関東地方と呼ぶようにしています。

永山:殴れ、とは思わないけど、そういうストーリーがあることが悔しい。しかしそういう思いをする構造があることも大切だと思う。日本の将来、ここに何があるのか、今あるものでどうするか、ということをマネジメントしていくことが必要。

高崎:もちろん、いい芝居を創る、ということが大前提。それができたという前提で、聞いていただけたら、と思うのですが、たとえば北村さんだったら、大分でどういう企画制作力を持っていればいいと思いますか?

北村:僕がこの土地で何かしなければならないと考えたら、仕事を持っている前提でどこまでクオリティや集団性を上げていくのかということを考えます。仕事とか、演劇以外のことを意識して演劇に携わっていくことを考える。

清末:そうですね。そこらへんでジレンマに感じている劇団員も多い。もっと芝居作りの時間がほしい、でも、20〜30代の職場の中でも中心戦力の年代が多い。じゃあ、その中でどういう作品づくりをしていくか、ということを考えていかなければと思います。全員がなかなか集まれないなかで、どういう練習方法があるのか、とか。

北村:やり方は僕たちが考えるしかない。言い訳をしない、ということが大事。

清末:できあがった作品に対して言い訳をしない、ということですよね。

市原:地域では、演劇を見たことがない人に見てもらわないと観劇人口が増えない。子どもやお年寄りに、自分たちのしているお芝居がどんだけ魅力的で面白いのか、分かるように伝えていかなければならない。制作者に限らず俳優、演出、みんなが言葉にできる力が必要だと思います。

高崎:そろそろお時間になりますが、最後に、何か言いたいことなどあれば。

北村:今までの話は作り手側の話。劇場には創る人もいるし、見に行く人もいる。見に行く人のほしい劇場ということも考えていかなければならない。作り手側だけの劇場ではないと言うことを意識していかなければならないと思います。

中原:今度、新しく大分にできる劇場はまどかぴあと似た構造。複合施設のメリットの部分も大きいと思います。総合施設というメリットも生かして、新しい観客層との出会いも見つけていけるのではと思っています。

高崎:お時間になりましたので、これで第一部を締めたいと思います。みなさんありがとうございました。


 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 




 

主催等

主催:大分演劇活性実行委員会「おおいた演劇の会」
共催:九州地域演劇協議会、NPO法人FPAP
平成22年度文化庁芸術団体人材育成支援事業