ゲキトーク 川口×斎藤×谷×橋本 サイトはこちら

タイトル
ゲキトーク 川口×斎藤×谷×橋本 とび出せ、地域を!やっただけで終わらない他地域公演
日時
2013年5月18日(土) 15:00〜17:00
会場
リノベーションミュージアム冷泉荘
パネリスト
川口大樹(万能グローブ ガラパゴスダイナモス)、斎藤努(ゴーチ・ブラザーズ)、
谷竜一(集団:歩行訓練)、橋本理沙(万能グローブ ガラパゴスダイナモス)
進行
高崎大志(NPO法人FPAP)

その1 >>その2 >>その3 >>その4

3.予算について

谷:おおよその公演の総予算はどれくらい?
…もう怯えてるんですけどね。(笑)700人規模の公演をするところの予算額を聞くのが怖い。(笑)
(会場笑い)

橋本:このころ、私が制作をはじめて2年くらいのころだったので、まともな予算をたてれる人ではなかったので…。
高崎:だいたいの所で言うとどれぐらい?
橋本:だいたいの所でいうと、総予算が200万円ちょっと。東京、福岡コミコミで。予算を組むにあたって、一番最初、自由に予算を組んでみたら、どうしても収入に対しての赤字が30万円くらい赤だった。赤だと公演をする意味がないなと思って。なので、4,5パターンの予算書を作って、黒になるにはどうするかというようにシミュレーションしていく。
川口:劇団として、どこは削って、どこは大胆に、っていうのはきちんと選ばないと、ただ予算をちっちゃくしようという事だけをやっても結局意味が無い。僕らで言ったら、舞台装置有りきのお芝居なので、そこを弱くすると予算から抜く意味が無い。
ツアー公演というと、定石であるのは、なるべく簡素な舞台でというのが、やり方としてはひとつある。
高崎:装置が大きいと大きなトラックもいるし、運転手も必要だし、搬入とか大変だから、なるべく小道具だけとか、衣装だけとかにする作品が、ツアー用の作品だと言われている。
川口:まあ定石の一つですね。ただ、うちに関しては、当てはまらない。キャストの数も減らすのが(宿泊費、交通費などを考慮すると)合理的だが、そこはどうしても減らせない。フルスケールでいこうというのが一番最初から決めていた。じゃあ、減らすところはどうしようか、という考え方で、予算は組みました。
谷:具体的に削ったのは?
橋本:いかに効率的に安い方法でいけるかを考えた。一番お金がかかるのが、宿泊費、交通費、運搬費、がネックになると思うんですけど、ここを抑える方法はないか。宿泊は劇場に泊まるというのをした。交通費は飛行機の早割。一番安いチケットおさえた。運搬は物量が多いので、普通に見積もると(その時の価格で)35万円とかになってしまった。それだと、どうしても成り立たない。そこで、いろんな人の話を聞いて、コンテナ車で輸送するという方法があるということを聞いた。いろいろ会社を調べて、いいところでコンテナ輸送だと(その時の価格で)15,6万で東京に行くことができた。



高崎:広報頑張らないといけないという意識は劇団の中で共有できた?
川口:僕らは、東京に限らず、福岡でやってる時も、常に危機感を持っている。福岡でやばいのに東京ではいよいよとんでもないだろう。そこは共通意識として全員怖れるぐらいの気持ちで持っていました。
多少、1,000人くらいはいくだろうというところには来ている。それでも、油断しているとどんどんどんどん落ちていくというのは常にありますね。

高崎:ということで、アゴラ公演は、福岡にいても、動員的な成果は伝わってきていて。こういう芝居でお客さんが喜んでくれているというのは。100人、200人だけ喜んでもらうというのでは次に繋がらないかな、と思ったんだけど。今の話を聞いていたら、特に広報という点で、かなり入念に計画して、全席完売といえるのがひとつの成果だし、それを多くのお客さんに喜んでもらったというのが、かなり次に繋がる、やっただけで終わらないなという感じがしましたね。
川口:ありがとうございます。

高崎:やってどうだった?楽しかった?
川口:東京公演するというのは一つの冒険に近い。福岡からすると不安もあるけど、テンション上がる。それをやってる俺たち頑張れるじゃん。というモチベーションをキープするという意味でも、すごく有効だったなと思う。実務的なこともそうですけど。集団としての“勢い”みたいな自信や、“東京でこれだけやれた”という見えない何か自覚が残ったな、という感触はある。もしそこでお客さんが100人くらいでスカスカでしたとなったら、ちょっと…ねぇ。へこみますよね。会議も悶々としたミーティングになる。そこで調子に乗りましたね。

高崎:斎藤さんは、そうやって他の都市から来るいろんな劇団の人達を見ていると思うんですけど、今の話を聞いて思うことがあれば。
斎藤:一回だけやるのは結構簡単なんですよね。
今聞いてて、きちんと計画する意識があるから、単純な1回だけのお祭りで終わらせないという意識は持っていると思った。 
それができないと、1回目の公演はいいけど2,3回目にはトーンダウンしていく劇団も多い。僕が関西で制作している時、周りの若手にそういう事がよくあったような気がする。 
高崎:福岡だと一回行って終わっている劇団は多いので。その点で、関西の劇団は2,3回やるところは、まだ立派だと思う。

4.F/Tについて

 

高崎:ガラパさんの東京公演の話は気持ちよく聞かせて頂きましたけれども、次は、谷さんの集団:歩行訓練のF/Tの話を。
F/Tという日本で一番規模の大きな演劇祭。普通の公演のチラシはA4一枚くらい。演劇祭のチラシってなったらA3とかだが、F/Tの場合はパンフレット。
予算が全部で2億、(のべ総観客)2万人、公演数は80,90くらいの規模。
あと特徴的なのが、国際演劇祭、作品が先端的なものが多い。なので、演劇をよく観る層が喜びそうな演劇祭。

谷:F/Tという演劇祭を知ってる人って(近所だと)少なくて。山口の人だと(福岡より)もっと知らないようなフェスティバルではある。山口では、専門的に舞台芸術に関わっている人しか知らないと思う。
山口県の文化施設とかに行っても、「あぁ、そういうものがあるんだね」というレベルの認知度のフェスティバルに残念ながらなっちゃう。このフェスティバルの「公募プログラム」に参加させてもらった。
この公募のプログラムは、英語では、エマージングアーティストという名前。
若い劇団から海外の劇団まで、180くらいの応募あり、選考を経て(2012年は)11団体残り、F/Tの枠組みの中で公演する。
高崎:その「公募のプログラム」は世界のどこからでも応募できるの?
谷:アジアから応募できる内容。(2013年は)一番遠くてインド。
高崎:一次審査はどういう審査?
谷:一次審査は、登録フォームを埋めるというのと10分以内のプロモーション映像を送る。それで30団体ぐらいに絞られて、その後面接。それから選考があって決定となる。
高崎:最終的に、11団体が東京のF/T企画の中で上演するということですね。
上演しただけで終わりじゃないの?

谷:(F/T12の場合は)公募プログラムだと広報は、国内の参加団体は“キックオフトーク”というのをやらせてもらった。場所は東京芸術劇場の一室。公募プログラムに参加する日本の団体の代表者が(F/T12公募プログラムでは5団体)、プレゼンテーションをしたり、自分の劇団の紹介をすることができる場となっていた。
また、クロージングが終わった後、“ユリイカ” (青土社)という雑誌の中に対談という形で、記事にしてもらった。

高崎:公募企画って審査員が見に来て参加団体に賞を出すっていうのが、一画の企画になっているということですね。
谷:えーと、アワードがあるんですけど。F/Tアワードというのがありまして、公募のプログラムの中から1団体選出して、来年の主催プログラムとして招待されるというのが授与される。
高崎:F/Tの公募は、最初180団体から始まって、審査を経て、11団体が上演して、それを審査員が見ていて、一つの団体に賞を渡す、ってところまでが一画の企画になっているということ?
谷:そうですね。ちなみに、2012年はインドネシアの団体が残りました。
(一同)へー。

高崎:その(審査員の)中の選評で、谷さんのところが、複数の審査員から、好意的な評価を得ていて。権威性のある人が見に来てくれて。そこで、一人じゃない、複数の審査員からの好評価を得たっていうのは、一つの成果で、次につながる成果だと考えている。そこで、ここまで行けた理由は?それまでの準備とか計算とかは?やっただけで終わらなかったのはこうじゃないかな?みたいなところはどんなところですか?

谷:なかなかどこから話したらいいものかというのはあるんですけど。最終的に、さっき言っていた、2人の審査員からご好評をいただいたというのが一つ。それと、アワードのための審査員投票があるんですけど。3回投票が行われて、去年のF/Tの場合は、最終投票に3団体残った。残念ながら国内の団体は全滅だったんですが…(笑)2回目までで、国内組の中では残ったほうだった。
なんでそういうことになったのかというのを思ったんですが。単純に僕達の作品がどうこうという話ではおわらない話になってきていて。というのも、F/Tが非常に極端なフェスティバルであるということがある。これは僕が参加を通して胸に抱いたものでもあるんですけど、演劇をやるということがどういう機能を持ちうるか、ということを(フェスティバル全体で)考えていて。「F/Tアワードをあげる」というのは、おそらく「一番面白かったで賞」ではないと思う。作品の完成度はもちろん議論されるべきだと思うんですけど。じゃあ、この人達が、F/Tアワードという賞をとって、日本に招聘(しょうへい)されてくるとしたらとか、東京で主催事業としてやるとか、あるいは、この人達は次に作品を作るときにどういう影響を与えうるだろうか。というところまで視野に入れて、はっきり明言していくというスタンスがフェスティバルにあります。
僕達の場合は、確か、首都圏・関西地域以外は、国内で初選出という状態でした。実際応募数も少ないんですよ、東京以外は。国内では約半数が東京からの応募で、関西が20くらいの応募でした。そういう地理的な条件は(選考の上で)少なからずある。というのと、作品の内容と、行動の仕方は連動して考えるべきだと思っていて。
特にF/T12では、、東日本震災以降、どういう表現をしていく必要があるのか、ということろを総括されていた。僕は正直震災のことよく分からないな、というところからスタートして。それがどういうところなのかということを考えた時に、“お金の問題”に行き着いた。その問題の選び方が評価されていたのではなくて、一番評価されていたのが、自己言及的だというところだった。極端なくらいに、どう考えてもそれは行き過ぎだろう、というくらいツッコミをいれつつ、茶化す。真剣に捉えてはいるんだけど、距離をもっていて、それがすごく極端だったようで。その極端さの中に、おそらくその自分は山口で、周りにそういう団体もいないし、福岡にもそんなにいないと思った。そういうことを考え過ぎちゃって、東京に行ってみたら、東京に行っても変だった、という話が(評価としては)一番大きいなと思う。

高崎:今の話、環境の話はあれだったと思うけど、特に今の話でいうと、上演に対して稽古段階というか、どういった準備をしていったというのを詳しくお聞かせいただきたいなと思う。

谷:「不変の価値」は、再演でF/Tの東京公演では作りなおした作品。概形としては、できている。だからプレゼンテーションしやすかったというのはあります。それはフェスティバル参加する段階までで、かなり大きい要素としてあると思います。あとは(説明するために)掘り下げるだけの作業になる。
高崎:それは意識的に行った?
谷:もちろんそうですね。「自分たちが東京に行った時に、自分たちは何を紹介できるのだろう?」と考えた時に、「こういう面白い新作をやります!」と言っても、「お前たち、それでどれだけ実現性があるのか?」と言われたら、やっぱりそれは聞く側には分かりづらいし、信用かけづらいというのもあると思う。日本の小劇場だと新作作るところがかなり多いと思うのだけど、継続してやっていい作品とか、問題意識というのもあるはずだし、そっちの方で、プランができている。そこからさらに成長性があるということに関して、話をしていくっていうことでプレゼンした。その公演する土地土地でもシーンを差し変えて育てていくっていうのも意識した。そうでなければ、責任が果たせない。というつもりでは(プランを)出しましたね。
高崎:戦略的に再演にしたということ?
谷:そうですね。

高崎:F/Tの性格に合わせて、作品の内容をアレンジをしてみたとか?

谷:それの逆で。作品を先に作っていて。それは2011年の初演の段階で、こういう作品に取り組もうというので、その時に、今自分たちの問題として抱えていることにまっとうに向き合っているフェスティバルっていうのはどこだろう、ということを考えた結果、F/Tとえだみつ(えだみつ演劇フェスティバル)だと僕達のなかでなった。
おそらくF/Tでないと(採択してもらうのは)無理だった。批評性の高い文脈でお客さんに見てもらわないと、なんでこんなことやってんの…というのがよく分からない。お客さんの反応があるってところまでのくくりのフェスティバルは、他に思い当たらなかった。えだみつの場合だと、滞在して中長期の中でお客さんと付き合いながら見てもらえるっていうところを前提にしないといけなかったのがよかった。劇場に来て観たから「分かった!良かった!」っていうことにはなりようがない作品という側面もややあったので 。行くところの選び方から繊細に考えていた。
高崎:娯楽性っていうのはそんなに重視しないの?
谷:いや、娯楽ですよ、かなり。
高崎:一般的な普段あんまり演劇観ないような人がイメージする娯楽性?

谷:演劇だ、ドラマを見に行こうというので来ると完全に肩透かしを喰らいます。でも「500円払ってなんかやってくれたら面白いよね」っていうのは、僕は(娯楽としても)かなり重要視してるんですけども。そこからスタートして、じゃあどうやってこの着想が問題意識を持った作品になるだろうって直で行っちゃうので、肩透かしを食らう人もいるし、すっと分かる人もいるしかなり両極端な反応になっていると思います。

その1 >>その2 >>その3 >>その4

主催・協力等

主催:NPO法人FPAP
後援:福岡市、(公財)福岡市文化芸術振興財団、九州地域演劇協議会


その他

ゲキトーク 川口×斎藤×谷×橋本 サイトはこちら