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制作者のための予算立案講座『戯曲を読む、予算を立てる』

8月17日,9月6日 | 講師:北村功治(kitaya505)
制作講座レポートテキスト

8/17、9/6の2回にわたり、制作者のための予算立案講座「戯曲を読む、予算を立てる」を実施しました。講師はkitaya505の北村功治氏。この講座は、制作的視点で戯曲を読み、作品の構想を考え、その構想を実現するための予算を作成する講座です。少人数制で、自分の団体の活動を話し、課題戯曲を自分達の団体で上演するときはどういう形態の公演になるだろうか、などをじっくり考えていきました。


8月17日 ~第1回目~

まず、北村さんの「予算作成や助成金の資料作成のテクニックの前に、なぜ自分たちは活動しているのか?それが実際の活動に繋がっているか、を考えてみる講座をしたい。」というお話から講座は始まりました。これは北村さんが講師をされる制作講座に共通するテーマなのだそうです。

<課題戯曲「春、夜中の暗号」の感想>
まずは、課題戯曲の感想を出していきました。

・見る人の想像力をかきたてる作品で福岡ではなかなか見ることができない。この作品を自分が制作をするとなったときに、出し方を考えて行かないといけないと思う。自分の所属する団体での公演は考えられないので、もし上演するなら、他の演出家かなぁ。
・少ない予算でどんな小屋にも行けそう。ツアーに耐えうる作品。ダブルキャストでの公演や色んな県でその土地の役者にでてもらったりなどいろいろできそう。
・出演者以外がなかなかチケット売らないという現状がある。どうやって芝居を成立させるか。ダブルキャストにして出演者を増やしたらチケット販売が伸びるかなぁ。

など、制作者目線の感想もいろいろと出てきました。

<事前に提出した団体のプロフィールを参照しながら、活動紹介>
事前提出の課題だった、団体プロフィールを参照しながらの活動紹介。
団体構成員と平均年齢、活動年数や頻度、直近の活動について、団体の活動目的、団体の課題や悩みなど、紹介して共有しました。
活動の年数や平均年齢によってぶつかる壁、団体の収入に関する悩みや正社員の団員とフリーの団員の間の意識のずれ、また、これまでの予算の立て方で気になっていたことなど、受講者それぞれの悩みなどを話しあいました。共通するような悩みなども多く、共感しながら自分の場合はこうだった、などアドバイスも多く飛び交いました。

<予算の組み方についてのレクチャー>
予算の立て方には2種類あります。本があって演出家がいてと必要経費を積み上げていくパターンと、全体でいくらと決まった金額からわりふるパターン。
ツアーで複数公演があると、黒字の公演で他の公演分で補てんするなんてことも考えながら予算を立てる、などの基本的な予算の立て方が紹介されました。
北村さんは何の予算に対しても予算を3つ上げていたそうです。
・理想の予算
・どこまで削れるかの出した予算
・現実的な予算
それをすることで、何を削って何を残すのか、具体的に見えてきそうだなぁ、と思いました。

<課題に沿って予算を立てる>
団体の現在の課題、活動の目的などを総合し、受講者それぞれに、この「春、夜中の暗号」の公演の予算を組む時の課題が出されました。

課題の例
・「演劇人になじみのない一般への浸透を図る」を活動地で実現させるための企画の予算。金額に縛りは無し。
・ツアーの予算。活動地と北九州、他の会場は自由。チケット収入の範囲内で行うこと。
・所属する施設で実施するならどうするか。70万の予算で。
・ぽんプラザホールでの公演と駒場アゴラ劇場での公演。120万verと150万verとそれぞれ。

予算を立てる前にA4サイズ1枚の「企画概要書」を作成します。
これは、いつ、だれが、どこで、どのような趣旨でこの企画をするのか、ということを自分に落とし込むための概要書です。

この概要書の作成を課題とし、1回目の講座は終了しました。





















 

9月6日 ~第2回目~

2回目の講座は“なぜ、予算を組むのか”というところから始まりました。
受講者からは、団体の身の丈に合った公演をするため、赤字を出さないようにするため、全体の把握するため、収支のバランスを取るため、トラブルに対応するため、などの意見が出ました。

普段の生活では、予算を立てたり、家計簿をつけたりしなくても生活できます。公演などの企画で予算を立てるのは、事前にお金の動きを予測しコントロールするためです。予測と実際の検証ができるのは予算を立てるメリットと言えます。

この後、企画概要書を発表。それぞれの課題に沿った概要書が発表されました。
いよいよ、予算作成。概要書に書いた企画を実現するための予算書を作成していきます。

最後にひとりひとり、予算書を発表し、ディスカッション。
チラシ単価はいくら、脚本使用料の算出根拠、人件費の費目の工夫、などそれぞれの予算書を見ながらいろんな意見が出ました。

最後に、全ての予算書を並べてみると、同じ戯曲を公演にすると言っても、団体の現状や活動目的等によって様々な企画が生まれ、様々な予算書になるのだなぁ、と感じました。

予算作成という制作の一業務を通して、表現団体の活動を総合的に見直す機会となったようです。
また、少人数でじっくりと行なった今回の講座。九州内外で、それぞれの課題を持ち、活動している制作者が集まり活動の目的、課題、悩み等話し合う中で、顔の見える関係を築けたのではないかと思います。今後それぞれ活動していく中で、他の地域で活動する制作者の存在を感じ、励みとなれば幸いです。