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プロデューサーズトーク『about 福岡・九州地域演劇祭』

プロデューサーズトーク 『about 福岡・九州地域演劇祭』 福岡・九州地域演劇祭のプロデューサーによるトークセッション

日時
2010年9月11日(土) 14:30 ~ 16:00
パネリスト
高崎大志
司会
大橋敦史
当日会場で配布した資料をこちらよりダウンロードできます→PDFファイル

本演劇祭のプロデューサーが演劇祭の理念やテーマ、ファンドレイジングから広報まで、プロデュース面から演劇祭を徹底解明する「プロデューサーズトーク about福岡・九州地域演劇祭」。総合プロデューサー高崎へのインタビュー形式で行いました。
インタビュアーはプロデューサーの大橋が担当。客席からも質問を募り、「福岡・九州地域演劇祭」に関する、疑問やねらいを紐解いていきました。

このレポートではトークで明かされた「福岡・九州地域演劇祭」のプロデュース面での裏側を紹介したいと思います。



●この演劇祭を開催する動機、目的について
この演劇祭の構想は以前からあり、やるとすれば、ぽんプラザホールが10周年となるこのタイミングしかありませんでした。
主なテーマは3つ(環境・人材/福岡・九州/交流)ありますが、そのなかの一つに「環境・人材」があります。表現者が表現のクオリティを高めていくのに必要な環境は何かと考えた時に、表現者間の相互刺激が必要だと思っていました。
演劇祭による相互交流で表現者が刺激を感じられ、クオリティを高める契機にしたいと考えました。これまで行なってきた九州演劇人サミットでの九州の表現者たちのつながりも活かし、今回のラインナップとなりました。

●大学演劇部合同公演について
この企画は各大学の演劇部にいる有望な人材の出会いを目的としました。将来の地域演劇を支える人材の発掘です。各大学の意欲ある若者たちが出会うことで、今後ここから、自発的な活動へと発展していってほしいと思っています。演劇祭公演のトップバッターとして、実にいい舞台にしてくれました。

●「夏の夜の夢」について
演劇祭としての祝祭性を表現した企画です。クオリティを担保しながら、福岡の人材でどこまでできるかということへのチャレンジでもありました。
若手人材の育成も考えベテランばかりにならないよう、バランスも考えながらキャスティングしました。キャスティングの打合せのため、演出の後藤さんと協議を重ねました。20名強の出演者ですが、候補となる俳優の名前は100名近く挙がりました。
脚本の翻案にあたっても、芸術性・クオリティの担保と作家の育成の両立を念頭に置きました。

●3劇団同日公演について
九州の地域演劇をリードしてきた三劇団が同時期に同地域で公演することは極めてまれで、吸引力があると思いました。また、九州内の優れた劇団の公演を通して、福岡の演劇人への刺激を与えたいという思いもありました。また、作品の鑑賞やレセプションなどを通して相互交流を深められる好機とも捉えていました。

●連続上演について
連続上演「春、夜中の暗号」「よかっちゃん」は、クオリティを備えた地元作家の脚本で、実験性のある上演を行う狙いがありました。また、二つの戯曲賞で最終選考に残り、今後の活躍が期待される劇作家のアピールにもつなげたいという思いもありました。
脚本に忠実に作った「春、夜中の暗号」演出性を前面に出した「よかっちゃん」この対照的な構成は、さまざまな議論を生んだようです。

●九州各地への波及効果
九州の一体性を感じられるようになることが大きな波及効果と考えています。これはこの演劇祭の大きな目的の一つでもあります。育成であったり、地域のアイデンティティに関することは、短期的に効果が出るものではありませんが、地域で活動することに対する思いが強まる機会になっていれば幸いです。

●総合演劇祭ということということ
今回は演劇公演だけではなく、演劇や劇場と市民の交流という点にも力を入れました。一般市民に知らせるための広報もおこない、市民や地元の小学生を対象にしたワークショップを実施したり、中高生招待公演をおこなったりしました。
その他、役者を対象としたワークショップ、制作者を対象としたワークショップ、劇評賞など育成企画にも力を入れました。
演劇公演企画だけで形成されるのではなく、ワークショップやセミナーなどバランスの良い演劇関連企画で形成される「総合演劇祭」になったと感じています。

●広報について
通常の広報に加え、演劇祭のラジオ番組・天神のパブリックビジョン・演劇祭ラッピングベロタクシーなどを実施しました。
福岡・九州内はもちろん九州外に向けての広報も積極的に行ってきました。東京をはじめとする演劇の盛んな他地域への広報活動です。狙いは他地域の状況へのアンテナの高い演劇関係者。この演劇祭を評価してくれる可能性のある人たちに積極的に届けました。

●ファンドレイジング
今回の資金は公的な助成金によるところが大きいです。今回さまざまなところから助成金をいただきました。ぽんプラザホール10周年というタイミングであったこと、FPAPの活動が助成団体の審査員の目にも届くようになってきたこと、コンセプト・企画内容などの確かさが評価された結果だと考えています。
申請した助成金の結果が分かったのが今年の春です。演劇祭を実施するにあたって大変だったことの1つには、助成金の結果が出ていない時期つまり資金面の裏付けがない中でいろいろなことを決めていかなければならなかったことがあります。

●ロゴマークについて
今回のロゴマークは、単独で使ったり、つなげて使ったりといろんな使い方をします。単独のマークとしては、九州の州、(ぽんプラザホールにほど近い)中州の州、などをイメージ。組み合わせバージョンは九州から外へ広がっていくイメージを持っています。

●キャッチコピーについて
今回の演劇祭のキャッチコピーは「舞台芸術の道州制、はじまる」でした。いうまでもなく、福岡・九州というテーマに即したものです。これは主に九州内で配布するチラシ等に掲載しました。
九州外で配布したチラシのキャッチコピーは変えていて、「千載一遇の福岡・九州」にしました。九州外の方にとっては特に3劇団同時公演、それを1泊2日で観られる、ということを千載一遇の機会だと考え、それを前面に出していきました。また、九州自体が政治的にも経済的にも道州制に対して先進的なところがあり、道州制という言葉になじみがあるのですが、他地域での同じような道州制という言葉のなじみ方は確認できなかったので、キャッチコピーも変えました。

●チケットの価格設定について
今回のチケットの価格設定は圧倒的な安さだと思います。私たちはNPO法人(特定非営利活動法人)なので、耐えられる範囲の赤字で、福岡・九州の舞台芸術を振興するというミッションが達成できればよいと考えます。
これはもちろん気軽に劇場に足を運んでほしいという思いからです。演劇祭というひらかられた鑑賞機会で、チケット料金を安くすることで、観劇行動増加のトリガーになりたいという思いがあります。
最近の地域の劇団の公演で習作段階の公演のチケット価格が高騰している傾向にあると感じています。今回の演劇祭ではクオリティの高い作品を圧倒的な価格の安さで提供し、一石を投じたいという思いもあります。

●キャスティングについて
3本のプロデュース公演ではキャスティングについても深く関わりました。演出家とのキャスティングについてのやりとりは公演によって様々。 何回も打ち合わせをして決めていったり、こちらからこういう人はどうですかと提案したり、逆にこんな人いないですかと聞かれて条件に合致する人を見つけてきたりということもありました。
例えば「よかっちゃん」演出のわたなべさんは東京の演出家なので、福岡の役者を十分に知っているわけではなかった。でも何らかのきっかけは必要なので事前にワークショップをしました。実はそのワークショップに参加した人のキャスティング率が非常に高かった。特にオーディションワークショップと言って告知したわけではなかったけれど、私たちとしてはこのワークショップに集まった役者の中からいい役者がいたらご指名下さいという感じです。だからワークショップは本当にいろんな役者に声をかけましたね。コロス役の2人は本当のオーディションでした。

●企画成功のイメージについて
今回の演劇祭の受益者をいくつかに分けて成功のイメージを考えました。
・公演関係者、キャスト・スタッフ
・福岡市民観劇層、公演には直接関係しない福岡演劇人
・他地域の演劇関係者
・年に1回も観劇しない福岡市民
この各層の人たちがこう思ってくれたら成功、という成功のイメージを内部でかなり協議して、7人の制作チームで共有しました。コアメンバーがこの企画成功のイメージをしっかり持っていないと、いろんなところの判断がぶれてくるので、このイメージの共有はとても重要でした。

成果を検証できるのは5年くらい先だと思います。 一つ例を挙げれば、大学演劇部合同公演に参加した学生たちが言った「俺たちすごいことをやった」という言葉。謙虚な思いで、いろいろな人たちに助けられながら先輩の大学生たちの越えられない山を登ったという自負から出てきた言葉だと思います。将来の福岡・九州で演劇活動をしていきたいという思いも何人かの学生が語ってくれました。これは大学合同演劇部の成功のイメージとして持っていました。そういう比較的すぐに検証できるものについてはいい形で達成できていると思います。
大学演劇部合同公演部を例にとりましたが、これに限らず他の企画でも今後成果が出てくると思います。

●演劇祭のストーリー
今回の演劇祭の一番最初の企画は、パネルトーク「福岡の歴史をつなぐ~私の好きな劇場~」でした。
今回の演劇祭には、まず地元のことを知る、それから他の地域の人達と交流する、ワークショップなどに参加する、公演を観る、最後に公式レセプションで相互に交流して九州の一体性を感じるというような大まかなストーリーがありました。そのストーリーを体験するには全部の企画に参加していないといけないので実際は無理なのですが、遠くから見ている人には、この演劇祭のストーリーをみてとった方がいるかも知れません。
今の演劇祭では、公式チラシ等に、「この演劇祭はこういうものです」と書くのがセオリーになっていますが、最初から答えを出しているようで嫌だったので、周囲の反対を押し切ってあえて掲載しないようにしました。
自分で考えるより先に、理念やテーマを言ってしまう、分からないことはすぐに説明を求める、求めたら説明してもらえるという状況に対しての疑問を提示したかった。書かないのが正しいというのでもなく、書くのが正しいというわけでもないんです。ただ、書くのが当たり前という風潮は必ずあるので、そこに無自覚に乗っかるか、自覚的に乗っかるか、自覚的に反対してみるか、のどれを選ぶかだと思います。

●最後にこの演劇祭を振り返ってのコメント、次にあるパネルトーク「福岡・九州地域演劇のこれから」へに向けてのコメントをお願いします。
このプロデューサーズトークで演劇祭の概要をお話して、演劇祭については一定の振り返りができたと思います。それを踏まえて、これからの福岡・九州の地域演劇はどうなるのか、どうするのかということ、それから劇場・音楽堂法という現在の環境を大きく変えるような法律が検討されている中、私たちがどういう心構えを持つといいのかということも含め、これからの九州の地域演劇について、パネリストの泊篤志さん、池田美樹さん、高野しのぶさんと意見を交わしていけたらと思います。