観劇ディスカッションブログ

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FALCONの自己紹介

2011.05.19 Thursday | 第4回

はじめまして。このたび第4回の観劇ディスカッションツアーに参加します、FALCONと申します。
 現在は「空中楼閣」という劇団を主宰、座付きの劇作・演出をやっています。

 作家や演出家を志したのは18歳の頃、芝居の学校に通い始めてすぐの頃でした。養成所経験をお持ちの方は分かると思うんですが、駆け出しの頃って、セリフのある役をもらうのって大変なんですよね。
 しかも、やっとの思いでもらった役なのに、自分のイメージしている「俳優像」とは大抵かけ離れている役ばかりで、「こんな台本」「こんな役」では「オレが本当に引き立つような演技なんて出来るかよ!」って思うわけです。まして、同じ授業料を払っている、キャリアも同じ役者たち…、もっと言えば「オレなんかよりヘタクソ」な役者が、自分よりもいい役をもらっているんです。

 すべての俳優志望者が大なり小なり一度はぶち当たる「勘違い」という名のジレンマに、18歳の僕も直面したのです。そうして僕が導いた結論は、「自分に合った役や台本がないならば、自分で書いて、自分でキャスティングすればいい」という方法でした。
 早速行動に移した18歳の僕でしたが、「俳優がぱっとしないから」という理由で足を突っ込めるほど、作家や演出家の世界は甘くありませんでした。俳優になるために必ず超えるべき壁があるように、作家や演出家になるためにも様々な障壁があることを、その後の僕は身をもって知ることになりました。

 何より、演出という立場に立つと、役者をやっている時には見えなかった色々なことが見えてきます。
 役者は、作品の中における己の役のポジションを理解し、正確にその役を発色することが、「第一」であり「ほぼ全体」の仕事であるということ。己の「色」とか「主張」なんていうものをそこに介在させるのは、本当に最後の最後の香り付け程度の仕事であるということを知りました。。
 また、観客は、セリフを発している役者は見てなくて、セリフを受けている人物を見ているもので、セリフの意味を成立させるのは「受け手」側の仕事であることも知りました。

 とにかく、「役者兼演出家」という立場で芝居を見ていると、「役者って仕事はこんなにも面白いんだ」ということを再認識し、その奥の深さに愕然としたのです。
 だから、未だに僕は、「演出」なんてもののイロハは全く分かりません。役者が台本の中で遊ぶ行為には終わりがないし、今のところはその命題に挑むのに精一杯で、それ以外のことにはたいした興味がないからです。

 空中楼閣の芝居を見たお客様(それもおそらくは演劇関係者)からは、「FALCONの演出は音も光も使わないし、地味で面白みがない」という声も聞きます。しかし、派手な音や光のショーが見たければ、「そういう作品」を見に行けばいい。僕はどこまで行っても「役者」、すなわち「人間」が主役の作品しか作れません。
 ただ、「役者」が見たければ、「人間」が見たければ、僕の作る作品の劇場に来てください。きっと、あなたも「人間やっててよかった」と思えるような、まっすぐな芝居に出会えると確信していますから。


「礼の心を大切に…」FALCON

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FALCON(第4回) | comments (2238) | trackbacks (0)