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フレキシブルな愛の行方〜Whereabouts of flexible love』(男3女2バージョン)

(脚本:小松杏里)

     男1と女1が現れる。

男1 ほら、あそこ。(指差す)
女1 どこどこ?
男1 あの、ちょっととんがってるところの向こう側。
女1 えぇっ……どこ?
男1 いいかい、こっちからだと……

男1は、後ろから女2の肩に手をやり、見える角度に連れてきて見せようとする。
そこに、男2が現れる。

男2 何してるの?

男1は、女1から手を離す。
女1も離れる。

男1 あ、いや……ほら、例の。(指差す)
男2 ああ……(見て)ほんとだ。すごいな。
女1 えぇっ? (探して見ている)
男2 ガイドブックにも紹介されるわけだな。
女1 ……もぅ、教えてよ!
男1 だから、あの、ちょっととんがってるところ、あるだろ。あの……あ
女1                     (「あの」の後に)だから、それが……(気づき)どうしたの?
男1 ……消えた。
女1 ええっ!
男2 なるほどね。
女1 ……どういうこと?
男1 あ、いや、だから……終わっちゃったんだよ。
女1 そんなぁ……

そこに、女2と男3が現れる。

女2 ……見た?
男2 見た見た。
男3 すごかったろ!
男2 一瞬だったけどな。
女2 一瞬だからいいのよ。

女1は拗ねてる。

男3 ……どうしたの?
男1 見れなかったんだ。
女2 え。
女1 ……もう、なんでもっと早く教えてくれなかったの?
男1 いや、だって、時間は……
男2 俺は間に合ったぜ。
男1 …………
男3 なんだよ、明日見ればいいじゃないか。
女2 そうよ。
女1 でも、明日の今頃は、みんないないでしょ。
男3 ……そうでした。
男1 君が見たいっていうんなら、俺、残ってもいいよ。明日はちゃんと教えてやるから。
女1 ……もういい。
男3 そう、拗ねるなって。教えてくれなかったわけじゃないんだろ。たまたま見れなかっただけじゃないか。しょうがないさ。
男2 ま、タイミングの問題だな。
女1 ……そうね。(男1に)ごめんなさい。私の運が悪かっただけね。
男3 またそんなこと……
男1 いや、俺がもっとちゃんと―――
女2 別にあんなの見ようが見まいが関係ないわ。あれを見るためにここに来たわけじゃないし。
男2 そうそう、もっと大事なことがあるもんな。
女1 ……わかってる。
男3 ……そろそろ、夕食の準備が出来るって。
男2 飯の前に風呂入りたいな。ここ、温泉?
女2 天然温泉。
男2 やったー。
女1 ……ねぇ、普通の温泉と天然温泉って違うの?
男2 なんか、違うんだろ、成分とか。
男3 いや、同じさ。いい方が違うだけだよ。有名な温泉地の名前がついているかついていないかとか。もちろん、成分はそれぞれ違うけどね。あと、効用も。
女1 コーヨー?
男3 何に効くかってこと。
男1 ここのは確か、炭酸水素塩泉だから、神経痛や筋肉痛や関節痛、慢性消化器病や痔疾、冷え性、疲労回復の他、切り傷、火傷、慢性皮膚病などに効くはずだよ。あ、「美人の湯」っていわれているのは、この炭酸水素塩泉の場合が多いんだ。
女2 すご〜い!
男1 来る前にちょっと調べたんだ。
男2 そんなに詳しく調べたのに、あの時間だけはタイミングがずれたのか。
男1 いや、時間は合ってたんだけど……
女1 もういいから。ほんと。ごめんなさい、つまんないことで拗ねて。もっと、みんなで話しましょう。最後なんだし。
男1 ……うん。
男2 最後ねぇ。何が最後かわかんないけど。
女2 でも、初めてでしょ、5人揃ってこんなに遠出したの。しかも、一泊。
男1 最初で最後だからさ。
男3 よし。じゃあ、俺も温泉入るかな。
女2 夕食、大丈夫なの?
男3 みんな入るなら、いっとけば大丈夫だろ。
女1 混浴なの?
男3 違うよ、そういう意味じゃなくて。
女2 いいわよ、あたし、混浴でも。最後なんだし。(女1に)ね。
女1 え、あたしは……
男2 じゃあ、最初で最後の混浴をしますか。
女2 冗談よ。あたしの裸は、愛してくれる人にしか見せないもん。
男3 ほんとか?
女2 何よ。
男2 「愛する人」じゃないの?
女2 え?
男2 今、「愛してくれる人」っていった。
女2 だから、愛してくれる、人よ。
男2 そうだったんだ。愛するより、愛されたい。珍しいんじゃない、女性にしては。
女2 そうかしら。(女1に)あなたは?
女1 う〜ん、愛する方、かな。片思いが多いし。
男1 そうなんだ。
男3 というより、年齢的な問題があるんじゃないか。
女2 何よ、それ。大して変わらないはずよ、彼女と。(女1に)ね。
女1 ええ、確か5年。
男2 5年の年の差は大きいな。
女2 年じゃなくて、キャリアっていってよ、女性としての。
男3 そうだな、男関係のキャリア。
女2 もう。
女1 (女2に)やっぱり、仕事上、激しいんですか、男性関係?
女2 あのねぇ……あ、そうね、仕事上ね。しょうがないのよ。激しくしないと。(男2に)ね。
男3 (みんなにも見られ)いや、俺は知らないよ。そんな関係じゃないし。
男2 あれ、行ったことないんですか、彼女の店。
男3 ないよ。(女2に)な。
女2 ええ、一度も来てくれてないわ。
男3 これからも行かない。いや、行きたくても行けなくなるし。
女1 ……ねぇ、温泉入りましょ。
男1 (女1に)ここのは、女湯の露天風呂の方が広いらしいよ。
女1 へぇ。
男2 なんだ、差別されてるな、男は。
女2 そういうところがあってもいいんじゃない。
男3 今は女性客の方が多いっていうからな、温泉地は。じゃ、行くか。

     男2以外は行く。

残った男2は煙草を取り出す。
女1が戻ってくる。

女1 温泉、入らないの?
男2 外で一服してから行く。
女1 そう。(行こうとする)
男2 あ、さっきのやつな。
女1 え。(立ち止まる)
男2 実は俺も見れなかったんだ。
女1 ……そう。

     女1、去る。

暗転。
音楽。